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「川と海から」-063.

レンタル・サイクルのはしり

 

 明治10年(1877)に元町で石川孫右衛門が貸し自転車屋を始めた。これがわが国最初の貸し自転車屋だとされている。孫右衛門がある日山下町31番のフランス商館チリドル商会に行ったとき、主人のチリドルが前日到着したばかりの自転車を乗り回しているのを見た。チリドルは言う「自転車は汽車の次ぎに早い乗り物で、練習すればどんなに狭い道でも走ることのできる便利なものだ。西洋の各国ではさかんに使っている」。孫右衛門は30分ばかり練習して乗れるようになった。一台銀16枚という高い値段で誰でも買えるものではない、これを仕入れて時間貸しすれば大儲けできると考えた彼は翌日早速16台注文した。そして元町1丁目148番地に「輪乗場」をつくって貸し自転車屋を開業した。自転車が珍しい時代だったので一時間25銭という高い使用料だったが繁盛して行列ができるほどだったという。

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